美しき行列式たち, 第三回です. 連載にはタグ『行列式』をつけています. 今回は, 対角線によって縦縞がブツ切れてる行列式を紹介します.
6. Right ones (仮名)
これは巡回はしてません. がズルズルとずれて行ってる感じです. そして, 右一列のが印象的です. 行列のサイズはです.
(証明) とすると, 一行目と二行目でキャンセルしてになるので, 行列式はの因子を持つ. 同様に, について, ならば行目と行目が同じになるので, 行列式はの因子を持つ.
更に, この行列式は次式であり, かつの係数はなので, . (証明終)
この証明, Vandermonde determinants同様, 短くて美しいです. ですが, この方法に気が付かなかったらどうしましょう. 素直に順番に小さくして行っても証明できるんですよ.
7. Diagonal shift (仮名)
Right onesと形が似てる行列式です. 竹を切って少しずらした, みたいなそんな感じです. 計算は下から行います(好みの問題ですが).
(証明)
(証明終)
この式の証明に, 簡単な方法があるかどうかは知りません. 右の積和の部分は直ぐ分かるんですが, 後をどうするかが問題です.
8. Diagonal no-shift (仮名)
先程はずらしましたが, こちらはずらさずに, 対角線上が全て同じ値という形. 先程のDiagonal shiftと同じ積和が出てきて面白いです.
(証明)
(証明終)
9. Diagonal addition (仮名)
こちらもずらさずに, 対角線上に一定の値を足した形.
(証明)
(証明終)
まず最初に一行目を全ての行から引き, 次は一列目にそれ以外の列を足します. 対角線の要素を掛けて終わりです.
Right ones, Diagonal shift, Diagonal no-shift, Diagonal additionの4つお送りしました. いかがでしたか. こういうものはキリがなくて, 自分で新しい形の行列式を考えてみて計算してみるのも楽しいですよ. このタイプの行列式のいいところは, 縦に同じ物がいっぱい並ぶため, 一行目を他の行から引くことでいっぱいが出てくることですね. 明日は, もとからがいっぱいある行列式を紹介します.
追記 [date=2012/04/18]
nolimbreさんにコメントを頂きました. ありがとうございます.
まず, Diagonal shiftの証明.
列を全て列目に足すことで, その列が全て同じ値となり, 前に出せます. そうすると残った行列はまさにRight onesそのものです. 気が付きませんでした.
次は, Diagonal additionの方.
とすると, rankが1の行列となる. よってを因数として持つ.
この行列は次式なので, は一次式である. の係数が, の係数(というより, それに掛かるもの)はなので, となる.
なるほどー!!!ですね. nolimbreさん, ありがとうございました.