美しすぎるハートの数式

バレンタインデーなどというイベントとは全く無縁の人間だが、Heart Curve -- from Wolfram MathWorldというページをぼんやり眺めていたら、驚くべきほど美しいハートの数式を見つけてしまった。
(x^2+y^2-1)^3=x^2y^3

更に、この関数はHeart Surface -- from Wolfram MathWorldの断面であるという記述があり、これも美しい数式か、と開いてみるも、こちらはさほど美しい式ではなかった。
\left(x^2+\frac 9 4 y^2 + z^2 - 1 \right)^3 = x^2z^3 + \frac 9 {80} y^2 z^3
ハートの形としては、申し分の無い。

Heart Surfaceの方はともかく、Heart Curveの式は、これ以上ないほどシンプルだ。
(x^2+y^2-1)^3=x^2y^3

  • 場合分けがない
  • 多項式である
  • 次数が低い
  • 係数に数字がない
  • にも関わらず、ハートっぽい。

素晴らしい、の一言に尽きる。

皆さんが閉曲線を見たらせざるを得ないように、私もこのハートの面積が気になったので、求めようとした。グラフを見るに、面積は3以上4未満であると見当を付けておく。この式は、yについて簡単に解くことができ、
y = \frac{x^{2/3}\pm\sqrt{x^{4/3}-4x^2+4}}{2}
となるので、ハートの面積は
2\int_0^{x_0} \sqrt{x^{4/3}-4x^2+4} dx,\quad {x_0}^{4/3}-4{x_0}^2+4=0
である。

しかし、ここで私は断念してしまった。どうしてもこの後が計算出来ないのだ。適当に変数変換したらいいのだろうか? 見当もつかない。苦し紛れにも、数値計算に頼って3.662くらいであることは分かった。だれか、解析的に求めることができたらコメントなりなんなりで、教えてほしい。

さて、この美しい式はいつ発見されたのだろうか。文献にあたっていたら、Eugen Beutelという人(1880-没年不詳?)が、1909年に出版したAlgebraische Kurvenという本に載っているらしいということが分かった。ドイツ語で書かれており、ISBN-10: 3111007146、ISBN-13: 978-3111007144、amazonのリンクは http://www.amazon.co.jp/dp/3111007146/。全てのページがThe University of Michigani Historical Mathematics Collectionによってスキャン、無料で配布されており、http://quod.lib.umich.edu/u/umhistmath/ABN8368.0001.001にて閲覧可能であった。数分の格闘の後、ようやく、ハートの図を見つけることができた。 145ページ、なんと、この本のラストだったのだ。(一応リンクを貼っておく。このリンク先のpdfファイルの、下の下の方である: http://quod.lib.umich.edu/u/umhistmath/ABN8368.0001.001/149?rgn=full+text;view=pdf)


ドイツ語が分からないのが辛いが、確かに冒頭の式と同じような式(x^2y^3に係数4があるだけ、これくらい無視してもハートに見えるということで、誰かが改変したのだろう)が見えるのが分かる。グラフも、y軸が下向きに取られていることに注意すれば、同じ物である (Google translateにツッコんでやると、かなり読めた。ただ、やはり文脈がよく分からない。どういう意味で\lambda=4がgesuchteと言っているのだろうか..。もうちょっとしっかり読んで見ることにする。→ やっぱりよく分からなかった)。ともかく、100年も前の人が、知っていたのだ。 (もしかしたら、Eulerは知っていたのかもしれない。ハートっていつからあるんだろう?)

数式の美しさは時代を超越し、人々に感動を与える。音楽や、美術のように。

― そう、数式は芸術なのである。

Newton別冊『微分と積分 新装版』 (ニュートン別冊)

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おまけ

ハートのような形になる数式は、Heart Curve -- from Wolfram MathWorldHeart Curveを見ていると、愛の数ほど、いやまちがえた、星の数ほどある事が分かる。次の式も若干気になった。
x^2+\left(y-x^{2/3}\right)^2=1

これも最初の数式と同様、(展開したら) xyの六次式である。次数の点では劣っていないのだが、まぁ確かに項数が多くなるし、美しいとはいえない。やはり、面積が気になることだろう。このハートの面積を求めるのは、小学生でもできるほど簡単なので、読者へのバレンタインプレゼントとしよう。