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劇場版 まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語を見に行きました (二回目)

映画

少しばかり, 復習をしよう.


第十一話の最初のシーンで, キュウべえは非常に重要なことを語っている.
時間遡行者, 暁美ほむら.
過去の可能性を切り替えることで, 幾多の並行世界を横断し, 君が望む結末を求めて, この一か月間繰り返してきた.
なぜ鹿目まどかが, 魔法少女として, あれほど破格の素質を備えていたのか.
魔法少女としての潜在力は, 背負い込んだ因果の量で決まってくる.
鹿目まどかは, 暁美ほむらが時間を巻き戻す毎に, 強力な魔法少女になっていった.
暁美ほむらが何度も時間を遡るうちに, 鹿目まどかの存在を中心軸として, 幾つもの平行世界を螺旋状に束ねてしまった.
決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が, 全て今の時間軸のまどかに連結されてしまった.
暁美ほむらが繰り返してきた時間, その中で循環した因果の全てが, 巡り巡って鹿目まどかに繋がってしまった.
あらゆる出来事の元凶して.



このシーン, 見返していただくとすぐ分かるのだが, 鹿目まどかの背景に, 幾つもの歯車が描かれているシーンである.
キュウべえの発言に「因果」という言葉が複数回出てくるが, 歯車が因果の象徴であることは誰もが察することが出来るだろう.
この作品には, 歯車が象徴的に描かれているシーンが多く存在する.



更に, 先ほどのシーン, 中央の最も大きな歯車には, 時計の文字盤が描かれている.
暁美ほむらの部屋の椅子の配置も, 時計の文字盤になっている.
彼女の部屋では, 大きな振り子が動いている.
これらは言うまでもなく「時間」の象徴であり, 彼女の能力に関連していることは自明である.
更に, 時計というのは, 常に同じを時を刻み続けることから, 永久不変の象徴であり,
これは暁美ほむらが同じ願いを支えに時を繰り返してきたことを思い起こさせる.



時計を分解したことがある人ならば, 思い出して欲しい.
時計は幾多もの歯車によって構成されている.
その意味で, 時間と歯車の両者は密接に関連している.
彼女の表象は歯車であると言うなれば, よく見ているなあと感心するのである.



それが証拠に, やはり十一話の後半, やはりキュウべえが語るシーンで重要な描写がある.
何もかもが無駄だったと, 決してまどかの運命を変えられないと確信したその瞬間に,
暁美ほむらが絶望に負けて, グリーフシードへと変わるだろう.
このシーンの背景は, やはり歯車である.
そして, グリーフシードに変わる瞬間, 歯車は分裂し崩壊する.
非常に印象的なシーンであり, 見逃すわけにはいかない.



鹿目まどか, まどか, 円, これが円環の理であると言う解釈は誰でも思いつくものであり,
今回の映画で, 実際にこれが正解だったと分かったわけである.
決して, 巴マミの戯言ではなかったわけだ.
ここで先程の, 十一話の最初を思い出して欲しい.
キュウべえは, 鹿目まどかを「螺旋状に束ねられた平行世界の中心軸」だと言っている.
また, 十二話の最初は, こうであった.
数多の世界の運命を束ね, 因果の特異点となった君なら, どんな途方も無い望みだろうと叶えられるだろう.
ここで出てくる「因果」とは, 暁美ほむらが時間を繰り返してきた為に, 鹿目まどかに連結されてしまった「因果」である.
因果は, 歯車で置き換えて良い.
鹿目まどかを軸とする歯車に, 数多の歯車が連結されてしまったのだ.
歯車が噛み合っている様子を思い浮かべると良い.
「運命の歯車」という言葉を聞いたことがあろう.



ここで誤解してはいけないのは, 鹿目まどかは「中心軸」である事である.
彼女が歯車なのではない.
円も歯車も丸いものなので同じだろうと考えるのは, ミスリードだ.
歯車の軸が丸い様子を思い浮かべると良い.
むしろ, 円と歯車は, 別のものであり, 対称的に捉えたほうが良い.
丸っぽいモチーフはあらゆる場所に出てくるが, 全てを円環と結びつけてしまうのは良くない.



そんな祈りが叶うとしたら, それは時間干渉なんてレベルじゃない.
因果律そのものに対する叛逆だ.
君は本当に神になるつもりかい.



ここに出てくる「叛逆」という言葉.
これを無視することは出来ない.
少し慎重に考えよう.
鹿目まどかの願いが, 因果律そのものに対する叛逆だと言っている.



よく, アニメを善悪で捉えてしまう人がいる.
まどか☆マギカでは, どう観てもキュウべえが悪者に見えてしまう.
しかし, 鹿目まどかが叛逆するのは, キュウべえではない.
因果律そのものである.



これは, 因果と混同してもいけない.
鹿目まどかに連結されてしまったのは因果(=歯車)であるとすれば,
因果律とは因によって果があること, 歯車同士が噛み合い, 一方が動けば他方が動くという法則そのものである.
鹿目まどかはこの法則に叛逆したのだ.


尤も, キュウべえは感情がない論理的な存在である.
その意味で, 彼を因果律と解釈するのも悪くないのかもしれない.
実際, 彼の言葉は理系っぽく鼻につく表現である.
しかし, 因果律というのは彼が作ったものではない.
単に彼の思考の拠り所に過ぎない.
やはりキュウべえ=因果律は乱暴であろう.



十二話の後半を思い出そう.
鹿目まどかは概念になる.
彼女は, 美樹さやかを連れて行く. 「じゃ, 行こっか.」
つまり, 美樹さやかは円環の理に導かれて行ってしまう.
魔法少女は希望を求めた因果が, この世に呪いをもたらす前に, 消え去るしかない.
このことが, 魔法少女の間で口伝されている伝承ということである.
暁美ほむらは「まどか...」と呟く.
佐倉杏子, 巴マミは「まどかってだれ...」
魔法少女は魔獣と戦う世界.







さて, 新編のタイトルは, 「叛逆の物語」である.
まだ二度しか見ていないが, 記憶を掘り起こしながら, 書いてみよう.



時系列的には, 後編の続き.
つまり, 魔法少女は魔獣と戦う世界.
鹿目まどか: 円環の理, 魔女になったものを回収する.
美樹さやか: 既に魔女になっており, 鹿目まどかに回収されている.
巴マミ, 佐倉杏子: 魔法少女として, 魔獣と戦って生きている.
暁美ほむら: 魔法少女だったが, キュウべえソウルジェムの中に閉じ込められてしまい, 他の魔法少女を呼び寄せる.


本舞台は, 暁美ほむらソウルジェムの中.
魔法少女にとって, ソウルジェムは自己であることを思い出そう.
キュウべえ暁美ほむらの周囲に結界を張ることで, 彼女を閉じ込めていた.
彼女のソウルジェムは浄化されることなく濁り続けていた.


キュウべえの目的はこう.
魔法少女は, ソウルジェムが濁りきってしまうと消えてしまうと言う, 不可解な現象があった.
魔法少女たちはこれを「円環の理に導かれる」という言葉で表現していた.
キュウべえはこの現象がなぜ起こるのか, 或いは円環の理がどういうものなのかを理解し, ゆくゆくは支配したかった.
基本的に理系的な好奇心があるのだ.
十二話の最後でキュウべえはこう言っている.
「証明しようがないよ. 君が言うように, 宇宙のルールが書き換えられてしまったのだとしたら,
今の僕らにそれを確かめる手段なんてないわけだし. 君だけがその記憶を持ち越しているのだとしても,
それは君の頭の中にしかない夢物語と区別がつかない. まあ確かに, 浄化しきれなくなったソウルジェム
なぜ消滅してしまうのか, その原理は僕達にも解明できていない. その点, 君の話にあった魔女の概念は,
なかなか興味深くもある.」
キュウべえは, 「確かめる手段はない」と言っている.
「解明できていない」とも言っている.
分からないことがあれば, 原理を見つけようとするのは理系の性である.
キュウべえは実験家であり, 暁美ほむらソウルジェムを閉じ込め, それが濁り切るときに消滅する原理を見つけようとしているのだ.



さて, ソウルジェムの中の世界には, 暁美ほむら以外の魔法少女, 鹿目まどかの両親, 志筑仁美, 上条恭介などの主要人物, そしてベベと言う名を持つ巴マミのペットがいる.
暁美ほむらは, 彼女の願う幸せな状況を作るべく, 他の魔法少女を彼女の世界に呼び寄せる.
巴マミは, 魔獣と戦っていた記憶がある.
注意しなければいけないのは, 美樹さやか.
彼女は既に魔女で, 円環の理に回収されている.
よって, 暁美ほむらはまどかから呼び寄せていることになる.
百江なぎさも同じ状況.
美樹さやか百江なぎさは, まどかがどういう存在か覚えている.


魔法少女はナイトメアと戦う存在.
みんなにとって, 楽しい世界.
佐倉杏子も学校に通っている.



暁美ほむらは次第に違和感を感じていく.
そして, ベベ, つまりお菓子の魔女が作った世界だと勘違いする.
ベベを殺そうとして巴マミと戦いになる.
巴マミ暁美ほむらの足を掴んでいる以上, 銃対銃であり, これを「同じ条件」と巴マミは言っている.
マミさん強い.



しかし, 暁美ほむらは, 彼女自身が作り出した世界だと気がつく.
ここでキュウべえはネタバレする.
キュウべえの, 円環の理を観測し支配しようという企みを知り, 暁美ほむらはこれを阻止しようとする.
誰だって大事な友達の秘密を, 宇宙人に知られたり利用されたくはないだろう.



暁美ほむらは救済を拒み, ソウルジェムの中で魔女化することを選ぶ.
美樹さやか百江なぎさ, そして巴マミ, 佐倉杏子, 鹿目まどかは, キュウべえの干渉遮断装置を破壊する.
そして, 暁美ほむらは円環の理に導かれて行く.
と思うじゃん?



取り敢えず, ここで切ろう.
ここまでのシーンは, 非常に面白い単語や表現がいくつか出てくる.
二つピックアップしよう.


まず, 夢である.
暁美ほむら鹿目まどかに, こう言っている.
「あなたが遠いところに行ってしまう夢を見たの...」
また, 同様に佐倉杏子美樹さやかに対して次のように言っている.
「さやかが死んじまう夢を見たんだ...」
同じく佐倉杏子は, こっちが現実なんだろ的なニュアンスのことを言っていた気がする.
胡蝶の夢という言葉を思い出さずにはいられない.
少し物を知っている人なら, 同じことを思い, ニヤリとしたに違いない.
第十二話でも「夢物語と区別がつかない」というキュウべえの言葉がある.
胡蝶の夢は, 私の好きな言葉の一つである.


次に, ヒガンバナである.
暁美ほむらが, 自分が魔法少女でなくなったことを悟ったところで, 一面ヒガンバナになるシーンがある.
また, 魔女になった時に頭にヒガンバナを付けている.
彼岸に咲くからヒガンバナである.
死人花という異名を持つくらい, 縁起が悪い.
魔法少女ではなくなったことを意味するのだろう.
ちなみに, ヒガンバナ花言葉は「想うはあなた一人」なのだそうだ (http://hanabatake.moo.jp/monogatari/aki/higannbana.htm).
花言葉を暗示として使うのはよくある手であり, 少し露骨だと感じる人もいただろう.



スマホは木の葉みたいに落ちないよ!などという無粋な突っ込みは置いておこう.
バスが炎上する描写も, よく理解できていない.
「ほむら」だからと言うのは, 少し深読みし過ぎだろうか.
ヒガンバナを持ち帰ると火事になるという迷信がある.
果たして偶然の一致だろうか.
スリードだろうか.


さて, 話を進めよう.
暁美ほむらは悪堕ちする.
この物語は茶番では終わらない.
大どんでん返しである.



暁美ほむらは, 鹿目まどか即ち円環の理の一部を引き剥がしてしまう.
「裂けちゃうー」はどうしても笑ってしまうシーンだ.
悪魔となった暁美ほむらは, 宇宙の秩序を書き換え, 世界を支配する.



さて, この物語は, 最初は魔法少女キュウべえの対立構造として見えてしまう.
最初は仕方がないであろう.
しかし新編で, もはやこれは誤っていることが分かる.
この物語は, 暁美ほむら鹿目まどかの対立に, キュウべえが添えられている構造である.
キュウべえはお飾りに過ぎない.
彼は理系的な立場に立って, 論理では説明がつかない(=わけがわからない)人間の感情を観測する立場に過ぎない.



鹿目まどかは, 世界の秩序(=因果律)を書き換えてしまった.
暁美ほむらは, その鹿目まどかが作った秩序を, 更に書き換えてしまった.
重すぎる愛を前に, 鹿目まどかは為す術もない.
鹿目まどかが真実を思い出した時, 彼女は暁美ほむらにどうするだろうか.
暁美ほむら鹿目まどかに対してこう語っている.
「あなたとはいずれ戦うことになるかもしれないわね」 (みたいな趣旨, よく覚えていない)


キュウべえザマァではない.
鹿目まどかザマァである.
彼女が身を挺して作った秩序は, 彼女自身への愛によって乱されてしまったのだから.
魔法少女まどか☆マギカ, 今一度鹿目まどか暁美ほむらの対立構造で解釈しなくてはならない.
次作で, 鹿目まどか暁美ほむらに矢を向けるかどうかは分からないが, 本当に戦うとしたら, その時になって対立構造が生きてくるというものだろう.



鹿目まどかは, キュウべえの「わかる」因果律を破壊した.
キュウべえはこれを, わけがわからないと述べた.
新編で暁美ほむらが破壊したのは, 鹿目まどかの作った秩序である.
決して, キュウべえではない.
キュウべえがわけがわからないと言ったのは, 彼(ら)が作った干渉遮断装置が壊されたシーンであり, これを壊したのは暁美ほむら以外である.
新編で彼が行ったことと言えば, 舞台提供に過ぎない.
もし新編の次の話があるとすれば, わけがわからなくなってしまった彼はもはや傍観者に過ぎないだろう.