このタイトルで, 連載します. 7回書きます. 連日で更新しますので, 1週間まるまるお付き合い下さい. 全部で19個の行列式を紹介することを予定しており, 1回あたり2個か3個, 多くても4個ずつになります. タグは『行列式』をつけていきます. それでは, 行列式の美しい世界をご堪能下さい.
行列式の定義
行列式は次の式で定義されます.
ここで, は対称群で, 和は置換全体に渡ります. という定義を見てもなかなか実際の計算はうまくいきませんよね. 実際の行列式の計算は, ある行を他の行に足したり引いたり, 或いはある行に関して展開したりしながら行います. 他に, ある行が他の行の定数倍なら, その行列式はになります. こういう知識は持ってますよね?
ということで, ある程度の知識を読者に要求しておく無責任をお赦しいただいて, さっそく行ってみましょう. 美しい行列式1発目.
1. Vandermonde determinants
「行列式」という言葉がタイトルに入ってる教科書ならば, どんなものでも書いてあるであろう有名な行列式です. 変数は行方向に変化し, 指数部は列方向に変化するという, 割とオーソドックスな形.
ここで, 今後も通じる注意を1つ. というのは, 行列がであるような行列のことを意味します. また, 左辺はであるようなに渡って積を取りますが, 当然からの範囲です. は常に行列のサイズを指します. つまり, 扱う行列はだいたいのものです(一部例外を除く, のものもあり). は好意的に取って下さい. 他の文献と転置違い, 鏡像違いかもしれません. あと, 行列に特に名前がついていないものは『ほげ (仮名)』 って書いて適当な名前を付けてます. その名前は真に受けないようにして下さい.
Vandermonde determinantsの証明をしておきます.
(証明) に対して, ならばこの行列式の行目と行目が等しくなるためになる. よってという因子を持つ. 更に, 1番右の列はで割れるので, 全体にこれをかけて
更に, この行列式は次式であるので, は数字である. なぜならを満たすような組はあるからである. ここでの係数がであることから, となる. (証明終)
これほど簡潔に, 美しく証明できる行列式って結構少ないです. この行列式の右辺を「差積」と言います. 行列式が何かの積和であると言う式が, 今後いくつか出てきます. そして, そういうケースに於いて, 今回のように美しく証明できることがあります.
2. L same (仮名)
Vandermonde determinants同様, 行列式=何かの積和となっており, ものすごく簡単に証明できます.
(証明) に対して, ならばこの行列式の行目と行目が等しくなるためになる. よってという因子を持つ. 更に, 1番右の列はで割れるので, 全体にこれをかけて
次式なのでは数字である. の係数はなので, . (証明終)
この証明, シンプルで良いですね. 地道に計算すると次のようになります.
最初の行を全ての行から引き, にならないように上手く要素を拾っていき, 置換の数を数えれば終わりです. L字型行列式には, なかなかの魅力があります. 行列の形が何といいますか, 幾何学的な感じが強いからでしょうか... この連載の最後の行列式も, L字型行列式になります. ちなみに, Lとは逆じゃないかって思うかもしれませんが, 行列の慣習で左上から書きたいのと, 別に左右反転したところで行列式としては符号が変わる程度なので, わざわざ「逆L字」とは言わなくても良いでしょう(Lと逆Lが本質的に変わることがないので).
今日はこの2つで終わりです. どちらも, 非常に簡潔に証明できる, という共通点を持っています. また, 連載最後ではL字の最難関が待ち受けており, L字行列式の奥深さを感じていただけると思います. 明日は何を扱いましょうかな〜? お楽しみに〜♪