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映画『花とアリス殺人事件』を観に行きました

映画

よく他の映画の宣伝枠で流れていたので、気になって観に行きました。しかし、公開日後初の日曜日の昼にも関わらず、お客さんは2割ほどしか入っていませんでした。宣伝の仕方の問題なのか、そもそもターゲットが分かりにくいのではないでしょうか。興業的には残念ながら失敗してしまう気がします。

10年前の映画『花とアリス』の前日譚となる作品。前作は荒井花(花)と有栖川徹子(アリス)、そして二人の憧れの先輩(宮本雅志)の三角関係を描いた作品でした。本作『花とアリス殺人事件』は、転校してきたアリスと引きこもりの花との出会いを描いた作品になります。設定はつながっていますが、前作を見ていない人でも十分話を楽しめるようになっています。時系列的にも前ですし。もちろん、映画を見てから改めて前作を見ると、新しい発見があると思います。

アニメの制作にはロトスコープを用いており、普段手書き原画ベースのアニメばかり見ていると違和感を感じます。ところどころ、枚数が少ないんじゃないかと不安になる場面がありました。影を描かない色指定や、時々ブレる輪郭線に、イライラしたりするかもしれません。思い出してみれば、ロトスコープを用いた『惡の華』も賛否両論で、私のようにあの動画を受け入れられない人は見なくなってしまいました。慣れていないから違和感があるのか、表現として未熟なのかの判断は、素人の私には判断できかねます。謂わば、「リアルすぎて気持ち悪い」のでしょう。作品を見て慣れていくしかないのだと思います。

登場人物のセリフは、とても自然な会話に聞こえます。この点は、前作同様、花とアリスの素晴らしさですね。会話があまりに自然なので、世界観にすぐに吸い込まれてしまいます。役者さんもいいのでしょう。こういう会話、確かに女子高生はしてそうだなぁと言った場面が何度もありました。

ストーリーは、アリスが転校してくるところから始まります。『ねぇ知ってる?殺人事件』『殺されたのは、ユダ。殺したのも、ユダ。』よく話を聞いてみると、噂が噂を呼び、殺人事件の詳細は誰も真相が分からなくなっていました。クラスのリーダー的な存在、自称「魔界から蘇って来た女」ヌーこと陸奥睦美。長髪で怪しい風貌の彼女は、悪霊祓いの儀式を行います。ヌーはなぜ悪霊などと言い出すようになったのか。話の中で徐々に明らかになっていきます。これが、実に「ありそう」な理由なので、くすっと来てしまいました。魔界から蘇ってきた女、最強の引きこもりの花といった、一見異常な設定の登場人物たちが、青春時代の、いかにもありそうな理由によってそうなったということが氷解していく構造には、この作品ならではの面白さがあると思います。

アニメとしては動画に癖がありますが、ストーリーは申し分のない青春物。繊細な中学三年生というお年頃の心の揺れを感じられる、温かい作品だと思います。気になった方はぜひ映画館へ。