映画『思い出のマーニー』を観て来ました

細かい心情描写、無理のない物語進行、綺麗な背景、子守唄のような音楽。
どこをとっても心地よく、また何となく懐かしく、楽しめる映画でした。


簡単にあらすじを。

友達を作らず、自分が嫌いで、いつも輪の外にいる杏奈。最初の十数分の描写は、自分と重なることが多くあり、一気に作品に引き込まれていました。おせっかい焼きで、自分の気持ちを全く理解してくれないおばさんたち。慣れない土地に来て、知らない人が道の向こうからやってきたら、反射的に踵を返して早歩きで行ってしまう。お祭りに浴衣を着ていくという話になった時、本当は行きたくないって言おうとしたけど、セツさんに絵を書きに行きたいのかと勘違いされてしまい、本当の気持ちを言うのが面倒になってしまいます。こういう細かい描写一つ一つに「あー似たような経験あるなぁ」と、自分を重ねてしまっていました。

そんな杏奈の前に現れたマーニーという少女。日本人ばなれしたその容姿と、幻想的な月灯りに、魅了されました。また、昼間とは様子の違うお屋敷で、舞台設定が夢であるかのような印象を与えます。そこで、作品にとって大切な一つの約束が交わされます。それは、「女の子同士の秘密の約束」です。秘密というのは信頼関係の証であり、また二人の距離を近づけます。それと同時に、杏奈の心は少しずつほぐされ、表情も柔らかくなっていきます。秘密の約束は、後々さやかとも交わされることになりますね。

そんな時にお屋敷に引っ越してきたさやか。彼女が見つけた日記はなんとマーニーのもの。しかも、かなり古びた様子がしています。このことから、少しずつ杏奈はマーニーの存在を疑い始めます。そして、サイロでマーニーに置いて行かれたことから、マーニーに対する不信感…と思えば、すぐに仲直りします。雨が降る中で寝ていたため、風邪をひいてしまいます。回復した彼女にさやかが持ってきたのは、日記の続き。そこにはサイロの件が書かれていました。そして、さやかが持ってきた絵画の裏に、画家の久子の名前が書かれていたため、久子にマーニーについて話を聞くことにします。そこでマーニーの悲しい過去について知ることになります。

ここで1点不可解だったのが、久子からマーニーについて話を聞いた瞬間に、その正体について気がつくと思うんですが、気が付かないんですよね。夏休みの終わりに頼子が迎えに来ます。そのとき、杏奈が施設から智子のところに行った時に、施設の人から預かったという一枚の写真を持ってきます。それは、お屋敷の写真でした。その裏にはなんと、マーニーの名前が。そこでようやく、杏奈はマーニーが自分の祖母であることに気が付きます。心のわだかまりが取れた杏奈は、頼子をお母さんと呼ぶことが出来ました。多くの思い出の詰まった町をあとにするシーンで映画は終わりです。


要するに、幼いころにおばあちゃんから聞いた話を、当時いた町に戻ったことで思い出し、夢で追体験したということですね。幼少期に聞いた話というのは、その後の成長に大きく影響します。おばあちゃんから聞いていたお話が、おばあちゃんのことを思い出させてくれたんですね。自分はこういうことあるかなぁと思い返しても、何もないですね。子供を育てるときは気をつけたいです。

さすがジブリというべきでしょうか、やはり風景描写は非常に美しいと思いました。水の表現が美しい。干潮満潮、あるいは月という、時の流れを感じさせる要素は、マーニーの正体に対する伏線でしょうか。

私がこの映画に引き込まれたのは、最初の十数分で心情移入してしまったからでしょう。あと、美しい情景表現。謎めいた少女。テーマがいいですね。ただ子供向けではないでしょう、少しむずかしいと思います。でも私にとってはこれくらいの話のほうがいいですね。また観に行きたいと思います。