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「今生きている人は今まで死んだ人より多い」は間違いである

雑記

今生きている人は今まで死んだ人より多い - 地球にやさしい...らしい - Yahoo!ブログ
を読んでへ〜って思ってたんだけど, ググったら全くの間違いだったので指摘しておく.


まず, "how many people have ever lived on earth" でググって欲しい.
おそらく

あたりがヒットすると思う. まぁ内容は大体どれも同じ.


pdfファイルの記事を見ながらまとめてみると...
PRB(Population Reference Bureau)のCarl Haubによって1995年に推定値が発刊され, その後2002年に更新された.
その主張によると,

  • 2002年まで生まれた人間の総数は1060億
  • 2002年の総人口は62億なので, これまで生まれてきた人間のうち, およそ6%の人間が2002年に生きていたことになる.
  • 1970年の時点では, それまで生まれてきた人間のうち, 75%がその時代に生きていた.

という事だ.


トータル1060億なら, 今の世界の人口70億とかめちゃくちゃ少ないじゃないか!!!

Wikipediaには, この推定はunscientificであると指摘されたと書いてある.


それはともかく, 今生きている人より今まで死んだ人より多いという主張をへし折るのはわりと簡単だ.
Carl Haubの推定によると, 1200年から1650年までに生まれた人間は265億, 1650年から1750年までに生まれた人間は127億と推定してある.
出生率(birth rate: 人口1000人あたりの年間出生数)を, どちらの期間も60, 総人口を1200年は4.5億, 1650年は5億, 1750年は7.95億としてある.
この年代で, 自分で推定してみることにする.


PRBだけのデータだと果てしなく疑わしいので, 別のところのデータも合わせて推定してみる.
まず総人口については, World population estimates - Wikipedia, the free encyclopediaに乗っているデータを見た上で

  • 1200年: 4億
  • 1650年: 5億
  • 1750年: 8億

で見積もる.

次に, 出生率は昔のデータが見つからないのでList of sovereign states and dependent territories by birth rate - Wikipedia, the free encyclopediaを見てみる.
先進国では出生率は低い. PRBの推定は80だったが, これは高く見積もり過ぎなんじゃないかなーっていうことで,

で見積もる.
実際はこれより高いと思う.
なぜなら, 出生率30というのは1970年代の世界での推定値だからだ.


人口の推移を線形近似して, 1200年から1650年に生まれた人間の数は
\frac{4+5}{2} \times \frac{30}{1000} \times (1650 - 1200) = 60
より60億, 1650年から1750年に生まれた人間の数は
\frac{5+8}{2} \times \frac{30}{1000} \times (1750 - 1650) = 19
より19億となるので, 1200年から1750年に生まれた人間は, 少なく見積もっても79億.
(PRBの推定値は順に127億, 31億の, 合計158億)
(あと, 厳格な人は線形近似に疑問を呈するだろうが, 4億→5億とか5億→8億とかなので許して欲しい. 500万→5億みたいなのを線形近似するのはアリエナイが.)
(計算は全部切り下げている)


2010年の人口は69億前後なので, 今生きている人の数は, 1200年から1750年に生まれた人間より少ない.
もちろん, この間に生まれた人間は今はみんな死んでいるので, 「今生きている人は今まで死んだ人より多い」は間違いである, と言える.


ではあの今生きている人は今まで死んだ人より多い - 地球にやさしい...らしい - Yahoo!ブログの記事でどこが間違っていたのかと言うと, 「1万年間で生まれる人の数は総計10億人にしかならない」がおかしい.
この人の計算は, 一万年前の総人口0.04億で, 出生率25として
0.04 \times \frac{25}{1000} \times 10000 = 10
なので10億と見積もっている.
おそらく1800年までに生まれた人間が10億と言いたいのだろうが, 明らかに人口が増えていくことを考慮していないことが分かる.
つまり, 一万年前からずっと人口は400万で, そのまま1800年まで来たと仮定してるのだ(多分).
1600年にはもう5億人になっているのに... (つまり1600年から1800年までに死んだ人間の総数は10億は超える)
まあちょっと考えれば分かるようなミスだ.


線形近似など難しいことを考えなくても, 次のように考えることもできる.
もう一回World population estimates - Wikipedia, the free encyclopediaを見て, 世界の総人口を

  • 0年-900年: 2億
  • 1000年: 2.5億
  • 1100年: 3億
  • 1200年: 4億
  • 1300年: 4億
  • 1400年: 4億
  • 1500年: 4.5億
  • 1600年: 5億
  • 1700年: 6億
  • 1800年: 9億

で見積もる.
単純に100年ずつその時代の総人口を足し算して,
2 \times 10 + 2.5 + 3 + 4 + 4 + 4 + 4.5 + 5 + 6 + 9 = 62
となる. これはどういうことかというと, 紀元後0年から1900年までに死んだ人間は最低でも62億はいるということだ.
でもこれは平均寿命が100年だったとしての計算になるので, とても現実的ではない! (でも依然として「最低」ラインとしては良いだろう)
平均寿命が50年(これも高すぎる推定だ!)としても, これの二倍の124億となる.


おっと, 紀元前のことも考えてみよう.

  • -5000年: 0.05億
  • -4000年: 0.07億
  • -3000年: 0.14億
  • -2000年: 0.27億
  • -1000年: 0.50億
  • -500年: 1億

で人口を推定すると,
(0.05 + 0.07 + 0.14 + 0.27) \times 10 + (0.50 + 1) \times 5 = 12.8
より, 紀元前5000年から0年の間に最低でも12.8億人, 平均寿命が50年としてもこの二倍で25億は生きたことになる.
もちろんこれよりもっともっと多いはずである. (紀元前の平均寿命が50年もあるはずがない!)


さっきのと合わせて, 1900年までに死んだ人間は149億となる. 何度も言うが, 実際はこれよりもっと多い.
それでも今生きている人間は70億なので, やはり今まで死んだ人間の総数には及ばない.


PRBの推定値(1060億)はまぁ多すぎる(たぶん出生率80のあたり)にしても, 単純計算でタイトル通りのことはすぐ分かるのだ.
ともかく, なんでもきちんと自分の頭で考えてみるっつーこった.
Yahooブログの人は, 間違っていたにしても, 自分で計算しようとした形跡があるので, 学者気取りで人口爆発だの指数関数は凄いだのさもありなんというコメントを残している愚かな人達よりも評価できる. (結果はともかくそれをやったという事実が重要なのです!)
あと, 英語でググって一秒で間違いだって分かったので, もうちょっとみんなこういうことをしてみていいと思う. (ggrks in English!)
おわり.

追記(2012/11/03)

1900年に生きてる人は2000年の時点は殆ど死んでいるから, 1900年の人口もあわせて良かった.
なぜか計算した時はこれは合わせちゃダメだと思ってた.
という訳で,

  • 1900年: 16億

を149億に上乗せして, 「2000年までに死んだ人間は少なくとも165億になる」と言っておく.
まぁ真実は, 300から700億くらいなんじゃないかなぁ?
人口が100億になろうが, これを超えることはできない.


とにかく, 四年も前の記事だから, 何人かは僕と同じように計算して間違いに気がついたんだと思う.
だけどそれを指摘せずに, 何人もの人が思考停止して間違った主張をドヤ顔で振りまいているのを, 嘲笑っていたんだと思う.
そういう識者の遊びは辞めたほうがいい.

追記(2012/11/27)

「なんかよく分からないけどあれ間違いだったみたいよ!」
深い悲しみに包まれるコメントである.
あなたにとってわたしってそんなに信頼出来るのですか?
なんか凄そうな計算をしているように見えたから信じたのですか?
わざとデタラメの反証記事を書いた可能性を考えないのですか?
きちんと自分で検証してみてください, それがこの記事で伝えたいことなのです.
さもなければ, あなたにとって言えることは,「こういう説もあり, それに対する反対の説もあるよ」というだけです.
それに足して, 「自分の意見ではこうこうこうだから, どちらの説を支持する」と, そう言って欲しいのです.
デタラメを書いたつもりはないんですけどね, そんな本人の「つもり」は他人にはなんにもなりませんから.


まぁそれはそれとして, 本心を言えば, 元記事が未だにTwitterでリツイートされまくっているの, 失笑モノですわ.
更に言うと, もしかしたら元記事を書いたの本人, わざとそれっぽい記事を書いて多くの人を釣って爆笑してるんじゃないの?とか疑ってしまう.
でも気持ちは分からないでもない.