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ファイルが開けません

雑記

ボブ「おい、ジョン、このファイルはまたアレだよ。俺には無理だ。吸いだして読んどいてくれ。」
ジョン「オーケーさ。というか、前ツール渡したしたじゃないか。」
ボブ「うーん、ダメだわ。やっぱこういうのは向いてないみたいだ。」
ジョン「まぁいいさ。」


こちらはとある研究所。
かつては、電子情報時代を作ったパソコン。
しかし、急激な人口の現象と技術の後退により、一切の電子デバイスは使われなくなってしまった。
世に溢れるコンテンツは、器械仕掛けの印刷機によって刷られたものばかり。
技術が滅びて数十世代、誰も最早、パソコンのような古代の遺物を気に留めているものはいなくなった。


この研究所のクルーたちを除いて。


ジョン「ほいっと。吸出し完了。」
ボブ「速いな。」
ジョン「誰様に言ってるんだ。ハッハッ。」


技術の継承が途絶え、ハードウェアは何百年もの埃をかぶり、情報は土中に沈んだ。
古代遺跡の中から見つかった大量の古代電子デバイスが、彼らの研究所に集まってくる。
その中から歴史を復元するのが彼らの仕事。


ジョン「ボブ!さっき頼まれた奴、何かのプレゼンの資料みたいだ。言語が英語に似ているぞ。」
ボブ「おいおいマジかよ。手柄は俺にしといてくれよ。」
ジョン「ハハハッ。渡すものかよ。ロストセンチュリーの重要なパーツなんだからな。」
ボブ「冗談だよ。」
マリー「あらあら、また何かあったの。」
ジョン「ハッハッハッ。」


ボブはQWERTYキーボードにタイプし続ける。


マリー「あなたも好きねぇ。」
ボブ「面白いんだぜ、プログラミングって。」


ジョンはマリーが運んできてくれたコーヒーを啜りながらにやけている。


ボブ「なんか言えよ。」
ジョン「コーヒーはクラシカルブラックに限るな。」
マリー「クスクス。」


ボブが得意なのは、古代の命令文書、いわゆるプログラムの解析。
あまりにマニアック過ぎて、彼を理解しているのはジョンくらい。


ジョンが得意とするのは、バイナリーファイルの吸出し。
拡張子に詳しい。


彼らの時代の歴史の教科書には、ロストセンチュリーと呼ばれる空白の期間がある。
その時代の記録は全て土と化してしまったわけだ。


ジョン「うーむ、有益なことは書いていないようだ..。」
マリー「昨日も一昨日もそのセリフを聞いたわね。」
ボブ「ハッハッハッ。そんなものさ。」


ジョンはお構いなしに次のファイルの読み出しに入っている。


マリー「ところでボブ、あなたはこの一週間で何が分かったのかしら。」


黙りこむボブを横目に、こみ上げる笑いを抑えるジョン。
マリーの白い目はジョンに向けられ、彼はまた作業を開始する。


マリー「あら、郵便かしら。」


ベルの音に、マリーは表に出ていく。


マリー「ボブ、あなたよ。」
ボブ「うっほほーい。これって前のアレじゃないか。」
ジョン「査読通ったのか。確か…古代電子遺跡における命令文書解析について、だったか。」
ボブ「アッハッハッ。とうとう彼らも俺の書く論文に価値を見出してくれたようだな。」
ジョン「読むのが面倒になっただけじゃないのか。」


しかめつらをしながらマリーは手紙をボブに渡す。


ボブ「よしよし。さてと、仕事に戻るかー!」
ジョン「柄にもなく嬉しそうじゃないか。」


手紙を見てにやけるボブを脇目に、マリーはその場を去る。


ボブ「もう少し解析頑張るかー..。」
ジョン「んあー…このファイルもダメだよー…開けない…なんでこんな糞みたいなファイル形式を作ったんだ..。」
ボブ「お前、打率低すぎるよな。」
ジョン「うるせぇ。お前の仕事とは違うんだよ。」
ボブ「まぁそうムキになるなよ。」



彼らの遺跡解析は終わらない。