単位ステップ関数のフーリエ変換は, 非常に難しい. 今回はこれを考察してみよう. フーリエ変換は次の式で定義する.
単位ステップ関数は次のように定義される.
この関数の微分はデルタ関数で与えられる.
これの両辺をフーリエ変換すると,
よって, 公式
を用いると,
したがって,
となる.
ところで, 符号関数
と単位ステップ関数は,
の関係がある. 更に,
であるから,
である. 先程の公式を用いると,
となって
結果,
すなわち,
を得る.
先程は
であり, 今度は
となった. どっちが正しいのであろう?
は採用したいので, 上のようにのフーリエ変換が変わると, のフーリエ変換も変わってしまう.
結論を先に言ってしまうと, 後者が正しい.
直感的に行こう*1. は, 時間領域全体でみて, 直流成分を持つ.
直流成分をフーリエ変換すると,
である. よって
のほうが正しい.
なるほど電気系の人には通じそうな, 尤もらしい解答. 直流成分があるからそれに相当するスペクトルが立つのだ. 同じように, は直流成分を持たないから,
のように, 直流に相当するの定数倍の項はつかないのも正当化される. 更に, としておくのが自然だと分かる. また, は奇関数であるから, そのフーリエ変換は虚数部のみになるはずである.
もうちょっと数学的に行こう*2.
まではよろしい. ここで, は恒等式である. なぜなら, まず
であり, 更に
であるからである. よって,
とも書ける. ここで, は定数.
を用いると,
よって
となる. ここで,
は偶関数なので,
より, である. したがって,
を得る.
分かったような分からんようなだ. 狐につままれた気分. うーむ. って使ってるけど, のところでは大丈夫なんだろうかとか, 心配しだしたらキリがない. 更に,
をに適用してもいいのかどうか, 分からない. おさらいのためこの式を導いておくと,
ここで, はたと筆が止まる. そうだ, この第一項の収束が必要なのだ. あれ, じゃあこの公式ってとかに使えるの?
収束しない.
収束しない.
(ノ∀`)アチャー
でもだ. 仮に, のフーリエ変換がになることを知ってる人間が, これを用いてのフーリエ変換をしたいとなったとしよう.
ここで, であるから,
だ. であるから, .
... という似非数学. 何かがオカシイ, オカシイ. 無限を甘く見て痛い目に遭っている.
しょうがないので, 関数の収束を使った計算を書いておく.
であるが, これを
とする.
これによってのフーリエ変換が正当化される. を取っておいてで抑えておけば, 広義積分がちゃんと収束するからハッピーだ. 更に, のフーリエ変換はこの結果を用いれば良い. つまり, ダイレクトにやろうと思ったら,
であるから
として, 同じように計算するのだ. 結局のところ, 直流成分を取り出しているに過ぎない.
うーん, フーリエ変換難しすぎる. まぁともかく, 「二重の無限和? 入れ替える! 極限と広義積分? 入れ替える!」 が工学部ジャスティス.